都市を救うライフ・ライン (Urban-Lifeline)


Lifelineとは
米国では高齢者や病人が、突然具合が悪くなったとき、自分自身で緊急に救護施設を呼び出す電話サービスや設備を言う。

1971年のサンフェルナンド地震以降、用語Lifeline は専門家によって使用されはじめた。しかし、元来英語の lifelineは救命胴衣浮輪などにつながれた紐や縄などを言い、和製英語の一つとして混乱が発生したと考えられる。日本語では「生活線」とか「生命線」と表現されることもある。

2004年のイギリスの実話映画に「運命を分けたザイル」がある。二人のクライマーがアンデスのシウラ・グランデに挑み遂に頂上を極めた。下山途中、ジョーの足元が突然崩れ激しく滑落し骨折する。

ジョーは死を本能的に直感する。パートナーのサイモンも苦痛に満ちたジョーの表情を見てそれを察した。

体感温度-60℃、猛吹雪視界ゼロ。絶望的状況の中で、僅かな可能性を信じサイモンは最後のジョー救出を試みる。次の瞬間、ジョーの体は空中に投げ出され、切り立つ氷壁に宙吊りとなった。二人とも既に限界体力をとっくに過ぎている。

このままでは二人とも死ぬ。遂にサイモンはナイフを手にし力を込めた。ジョーの体は蒼暗いクレパスの闇の底に墜落。ところがである、ジョーは奇跡的に一命を取り止め、その後想像を絶する困難の末、まさに奇跡の生還を果たした。二人を結んだザイルは共にLifelineである。

サイモンがザイルを切ったことは激しく非難された。そんな中、ジョーは「あの時切ってくれてよかった。自分の立場が逆でもきっと切っていたに違いない」とサイモン弁護した。


井上靖の小説「氷壁」も、モデルはカラビナ破損でなく、実際はLifeline=ナイロンザイルの断絶である。1955(昭和30)年1月2日厳冬期の前穂高岳東壁頂上直下の岩場を登攀中にナイロンザイルが切断し、若山が墜落死した事件である。

当時、ナイロンザイルは強度的にも優れ革命的な新素材ロープと言われた。しかし、同様のナイロンザイル切断事故が穂高で3件連続した。


クライマーのLifelineはたった一人のためにも重大な意味を持つ。まして、都市のライフラインはそのロープの先に数百人、 時には数千人,数万人の命や企業や組織が結ばれている

都市には如何なることがあっても,絶対に断絶しないLifelineが必要なのである.